地球と宇宙を結ぶ宇宙エレベーター
2023/07/01
宇宙エレベーターとは、地球と宇宙を結ぶ未来の輸送手段です。
赤道上高度36,000kmにある宇宙ステーションから、地上へケーブルを下ろし、そのケーブルに地球と宇宙を結ぶエレベーターを設けるというものです。
エレベーターの拠点地となる静止衛星の宇宙ステーションから地上にケーブルを下し、反対側(宇宙側)にもケーブルを延ばすことでバランスを保ちます。
軌道エレベータ(天のケーブルカー)の着想は、宇宙旅行の父コンスタンチン・ツィオルコフスキーが1895年に既に自著の中で記述していたようですが、宇宙エレベーターの実現には多くの課題がありました。
最大の課題はケーブルでしたが、これは「カーボンナノチューブ」という超優れた素材により実現可能に近づきました。
宇宙エレベーターのケーブルの総延長距離は約10万kmで、引っ張りに耐えられる強度が必要なのです。
1991年に日本の飯島澄男博士が、「カーボンナノチューブ」という素材を発見しました。
それは炭素原子からなる筒状の形をして、高い強度を持ちながら非常に軽く、優れた伝導性をもちます。
カーボンナノチューブとは、
カーボン=炭素、
ナノ=ナノメートル(nm)、
チューブ=円筒
の3つの言葉を合わせたものです。( 1nm = 1/10億 m)
直径は人の髪の毛の5万分の1の太さです。
※(写真の筒状の直径が人の髪の毛の5万分の1の太さです。)
アルミニウムの約半分の軽さで、鋼鉄の100倍の引っ張り強度があり、硬さはダイヤモンドの2倍という優れものです。
それに加え、破断しにくく復元性、柔軟性に富んでいます。
また、導電性は銅の約1000倍、熱伝導性は銅の約10倍、耐熱性は空気中で750℃、真空中では2300℃に耐えられます。
ほとんどの薬品に反応せず非可溶で、熱硫酸にも溶けません。
しかし、その強度を保ったまま10万kmもの長さを製造することは、まだまだ難しく今後の課題となっています。
カーボンナノチューブの発見後は、今の技術レベルでも手の届きそうにあるため、実現に向け研究プロジェクトが日本やアメリカで始まっているようです。
概念としては
静止軌道にある人工衛星を重心として、ケーブルを地上に達するまで引き伸ばし、そのケーブル沿いに昇降することで、地上と宇宙空間を行き来します。
その際、全体の遠心力が重力を上回るように、反対側(宇宙側)にもケーブルを伸ばし十分な質量を持つアンカー(おもり)を末端に設けます。
ケーブルの全長は約10万 km で、1.下端(地上)、2.静止軌道、3.上端(宇宙側)の3ヵ所に発着拠点が設けられます。
私たちが使っている通常のエレベーターとは違い、ケーブルを介してハコを動かすのではなく、固定された軌道ケーブルに沿ってハコが上下に移動するものです。
(ケーブルは一定の太さではなく、静止軌道から両端に向かって徐々に細くなっていく構造)
地上側の拠点は、赤道上がケーブルが垂直になるため、かかる張力を小さくできるので最適といわれ、緯度が上がるほどケーブルにかかる張力が大きくなります。
それ故に、地球上の拠点はどこでも良いという訳にはいきません。
ケーブルカー(ケーブルが動くのではなくハコが動きます)の速さを200km/h程とした場合、地球から静止軌道までは約1週間、さらに上端までは5日間もかかることになります。
リニアモーターを考えた場合は、昇りのとき1Gで加速して、中間地点での速度は64,000km/hに達し、中間点からは1Gで減速すると、地球から静止軌道までは約1時間で行き来できるそうです。
(地球上の重力加速度:1G=9.80665m/s2)
宇宙エレベーター建設構想(説明)
宇宙エレベーターのメリット
1.物資輸送に使われる。
2.ロケットに比べ、低コストで大量の人や荷物を運べる。
3.墜落、爆発の危険がない。
4.有害物質をださない。
5.天候の影響を受けにくい。
6.一般人でも宇宙に行ける。
宇宙エレベーター建造が及ぼす課題
1.維持費
2.周辺環境など安全上の問題
3.環境への影響
大林組のプロジェクトチームが、2050年完成の構想をまとめたことで話題になりましたが、それにしても、カーボンナノチューブの開発に必要な技術等がまだ確立しておらず、カーボン結晶のひもは、長さ3cm程度しか作れていないようです。
国家的プロジェクトであるべきものが、まだ入口の民間レベルなので実用段階にはまだまだ課題多き構想のようです。
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