金魚のはなし たったちっぽけな命でも
2017/11/30
先日、知り合いの方から聞いた話をしたいと思います。
彼女いわく、
あまりペットとして地位が認められてないような「金魚」。
しかし、可愛がって育てたこの小さな生き物が、1000年近いペットとして人間に飼われた歴史があり、こまやかな感情表現をみせたり、死んでから随分後も飼い主を思っていてくれるとわかるような個人的には心が温まるような体験です。
何かペット飼ってる?
そう聞かれて、「金魚」と答えると、大抵聞いてきた相手はふぅ~んと興味なさそうに相槌して、話はすぐに終わります。
猫や犬じゃないと、ペットとして認められないのでしょうかね。
本当にちっぽけな命ですが、可愛がって育て、一緒に暮らしていると奥深い感情表現をするので、さすがに1000年近く、人間に飼われてきた歴史のある生き物だと思う時があります。
インコ等の鳥類も飼っていたことがあり、明るくにぎやかでかわいいと思いましたが、個体差がかなりありますが、性格が良く知的な感じの金魚にあたった際は、感慨深い物があります。
TVの歌番組をつけていると、美空ひばりの歌の際、じっと体を斜めに倒しながら聞き入っている姿など、ただ歌の振動が心地良いからだけとは思えないような、金魚離れした姿です。
人間と目があった時、金魚達は良く目を縦にサクッと動かして、まるでウィンクをするような挨拶をします。
又は、こちらが名前を呼びながら手を振ると、前ヒレを片方のみ動かして挨拶し返します。
この話をすると、泳いでるんだよ。とバカにされますが…。
しかし金魚は、どんなに可愛がっても魚、短命です。
ですが、上手に飼えば10年近くまたはそれ以上生きるので、オウム以外の鳥類よりは長く、猫や犬並みに近い寿命を持つものもあります。
可愛がっていた金魚達が次々と死んでいき、最後の一匹がなくなった後、このようなことがありました。
もう全部の金魚が死んでしまったので、水槽は片付けてしまい、1週刊後には水槽が置いてあった場所にはFAX付電話機を置いてありました。
夜、キッチンで一人、飲み物を飲んでいた際、電気が消えた居間を見やった際に、FAXの液晶画面がパッと明るくグリーンに光りました。
…!! ハッとして見ると、グリーンの液晶の上に長いすり鉢状の細かい泡が流れるように出始め、その中に最後の一匹だった金魚が頭を下に向けてとても気持ち良さそうに泳いでいるのです。
金魚のウロコは金色に光をうけて輝き、とても美しかったです。
頭を下に向けてその位置で泳ぐのは、その金魚のクセでもありました。
時間にすると十秒にも満たない一瞬のことで、気がつくと、FAXには異常はありませんでした。
全然怖くなく、丁度一週間位だから、昇天したのかな良かったと思っていました。
それから何年もたったある日のことです。
大雪の日に来客があり、上司は外出、その人が来ても帰社まで時間がかかるのですぐ下の喫茶店で待っててもらうようにと、申しつけられました。
決してコーヒーを入れちゃだめ、とのことでした。
ところが、お客様は、勧めてもすぐ近くの喫茶店に行ってくれません。
上司は連絡しても帰って来ず、しまいにお客は寒いね、寒いねと繰り返し始めました。
しかたなく、お茶を入れることにしたのですが、コーヒーが良いと言うので、入れて差し上げるとおいしそうに嬉しそうに飲んでいます。
飲み終わってしばらくすると、そのお客様は、帰って行きました。
コートをはおる際、袖がコーヒーカップに触れたらしくピシャッと音がして、少し飲み残しがこぼれた様です。
ピシャッという音がした瞬間、私ははっとしたのです。
金魚が尾びれでたたいた…。
食器を片づけるべく、テーブルに近づきこぼれたコーヒーを目にした時、金色のウロコが輝く飼っていた最後の一匹の金魚が、私の全身の大きさで重なりました。
頭を下向きにし、そのコーヒーのこぼれたあたりを見つめているように感じました。
もう随分前に、死んじゃっていたけれど、何かあった際は飼い主を護ろうとするんだな、と思いました。
金魚だけに非力のようでしたが、精一杯のことをしてくれたのだと思います。
そのお客様は、その後しばらくしてから、毎日昼過ぎまで私の勤めていた会社に来るようになったのです。
たとえちっぽけな命の生き物でも、可愛がって育ていつくしんだペットは、飼っている間だけでなく、死んでからもずっと飼い主のことを思ってくれているのだなと、この時初めて思いました。
この話は、ホラー体験ではありませんし、私は霊感がほとんどないため、驚いているくらいです。
金魚は数匹飼っていたのですが、不思議なことはその後家族にもありました。
これは、とても魚とは思えない、魚離れした金魚達の実話です。
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