静かでひなびた風情 山形大蔵村「肘折温泉」
2017/11/30
肘折温泉は、山形県大蔵村の山あいにあり、開湯1200年の歴史があります。
火山の爆発により形成された肘折カルデラの中にあり、昔ながらの湯治スタイルを守り続けている、静かでひなびた風情の温泉地です。
肘折という名の由来には、肘を折った老僧がこの温泉の湯に浸かり傷を治したという説がありますが、実際に骨折や傷に効果のある湯が沸いています。
私は、夏にこの肘折温泉を訪ね、素朴な雰囲気を楽しんできました。
◇
私は山形生まれなので、行ったことはなくても肘折の名前は知っていました。
祖母は近所の友人らと、よく湯治に肘折へ出かけていました。
肘折へは車で向かいましたが、崖から落ちるような山道を抜けたところに広がる温泉地でした。
温泉街には新しい旅館もありますが、ほとんどは狭い道をはさんで軒を連ねる古い旅館です。
◇
私が泊まった宿も古いつくりで、廊下や階段を歩くとギシギシと懐かしい音がしました。
お部屋はシンプルで、冷蔵庫は各階で共用、洗面所やトイレも男女共用です。
お風呂場は男女共用の小さいものが二つあり、男性と女性どちらが入っているのか分かるように、浴室前に「男性入浴中」というような立て札が置かれていました。
私も立て札を立てかけ入浴しましたが、誰とも一緒にならずのんびり入れました。
◇
食事は部屋でいただくスタイルで、地元の食材を使った体に良さそうな郷土料理を、たいへん美味しくいただきました。
夜は暗い廊下に蚊取り線香が置かれ、歯磨きや、冷蔵庫にものを取に行く際に他のお客と挨拶を交わしたりすると、なんとも懐かしく贅沢な時間に感じられました。
◇
肘折温泉には、冬をのぞいて毎日開かれる朝市という名物があります。
私が泊まった宿は、朝市会場の正面だったので、早朝5時にはバタバタとにぎやかになり、外を覗くと、地元の人や湯治客と思われる人、観光客らが入り混じってにぎわっていました。
以前宿泊したことのある祖母が、部屋の中に人がいるのかと思ったと、朝市のことを言っていましたが、それが分かる近さでした。
地元のおばあちゃんたちが地べたに座り、採れたての野菜や山菜、手作りのおむすびなどを広げ、お客を呼び込んでいました。
昔は湯治客のおかずとして売られていたそうですが、今はお土産として買っていく人が多いそうです。
今でもこんな風景が残っているんだと嬉しくなり、心が温まりました。
◇
温泉街で足湯に浸かっているときに、そこのご主人にスイカをごちそうになり、印象深い話を聞きました。
ある団体一行が来たときに、ここは出迎えも見送りもなくて、もてなしができていないと言われたそうです。
「ここは湯治場として残してきてるから、そういう贅沢な旅がしたい人には物足りないんですよ、このひなびた感じが良いって言ってくれる人でないとねえ」とご主人は言っていました。
たしかに、きれいさや行き届いたおもてなしを求める人には向いてないと思いますが、私は心温まるゆったりとした贅沢な時間を肘折で過ごせました。
素朴でひなびた雰囲気が好きな人には、ぜひおすすめしたい温泉です。
More from my site
関連記事
-
-
何度行っても飽きない 南紀白浜の魅力
和歌山県の観光名所と聞くと、多くの人が南紀白浜の名前を挙げると思います。 観光客 …
-
-
似ている「さっぽろテレビ塔」と「名古屋テレビ塔」と「大通り」
さっぽろテレビ塔と名古屋テレビ塔からの眺めって似ていますよね。 碁盤の目の道路と …
-
-
広島の忠海(ただのうみ)で過ごした子ども時代
広島は私にとって、思い出の土地です。 父の実家があったので、12歳になるまで、夏 …
-
-
長崎県の魅力ご紹介します
長崎県は全国の中で一番島が多いところで、壱岐、対馬、五島など多くのひとがすむ島や …
-
-
和歌山県の紀伊白浜 おすすめスポット!
大阪に住んでいた時は、よく和歌山に行っていました。 そこでのよく行っていたスポッ …
-
-
2018年 流氷を砕きながら突き進む ガリンコ号Ⅱ
北海道遺産にもなっているガリンコ号Ⅱは、「ネジを廻すと前に進む」ように、ねじの原 …
-
-
函館旅行 / ファイターズの中田と稲葉にも会えて超ラッキー
5年前になりますが、5月の中旬に函館に行くことになりました。 私は北海道に住んで …
-
-
さっぽろラーメンは味噌だけじゃない醤油味 味噌味 塩味メニュー
さっぽろには、戦前から在日華人の調理人達によるあっさりスープのラー …
-
-
千葉県民には普通 他県民にはビックリ!の話
わたしは転勤で他県から千葉県に引っ越ししてきました。 すると「何それ!?」と驚く …
-
-
金沢市に二年ほど住み 街の良さを知りました
仕事の都合で太平洋側から石川県金沢市に転勤をし、二年ほど住んでました。 石川県に …
- PREV
- 震災から4年が過ぎた東北へ家族4人で旅行
- NEXT
- 東北旅行 母との思い出の旅