困った時はお互い様を学んだ 子供の頃の時代
2016/11/02
かれこれもう半世紀以上も前の話になってしまいます。
親の転勤で北海道の赤平市という、当時は炭鉱の町として大変賑わっていました。
町全体が炭鉱に携わって生計をたてている人ばかりの町でした。
初めて経験した北海道の寒さの中で、なつかしく思い出として欠かせない人物がおりました。
ストーブの前でお酒を飲んでいた「おじさん」を思い出します。
まだ小学生になる前に、父母と2才年が離れた弟と4人家族で、都内の石炭会社からの転勤で赤平市に引っ越してきました。
生活は私よりも、一番の不安は母だったと思います。
予感はしばらくして的中しました。
暖房もだるまストーブという大きな物でしたが、火だねをおこしてから火が消えないように、まめに石炭を入れなければいけません。
母も北海道での初めての冬越しで、分からないことばかりの日常生活のようでした。
一段と冷え込む時期にさしかかるとまず、朝は水道は出ません。
水道の水が凍ってしまっているのです。
その時はお風呂は石炭でしたが、マッチで火をつけるガスコンロはあったので、急いで湯を沸かし水道の蛇口にお湯をかけていました。
ふと、思い出すのはそのだるまストーブの前によく座っていたおじさんです。
小さかった自分は年齢の推測がつかないですが、赤ら顔した小柄で、無口ですけど顔はいつもニコニコして、黙って母から出されたお酒を飲んでいました。
おじさんは厳冬でしなくてはならない、辛い仕事を全て引き受けてくれた方でした。
まずストーブに石炭を使えば、当然えんとつの掃除をしなくてはいけません。
積雪の中で屋根に上り、煙突を女性が掃除するのは無理な話です。
父は高度成長時代の九州男児、全く手伝った事はありません。
家の中から伝っている煙突の筒も外し、すす掃除から屋根の雪おろしなど重労働な筈ですが、嫌な顔ひとつせずやってくれていました。
又、もっと辛いのは冬のトイレの対処法でした。
汲み取り式なので、汲み取り車を依頼しなくてはいけないのですが、雪が深くなるとそうもいかず、排泄物は全て凍ってしまい、どうしようもない状態の中でどうやって処理したのかは覚えていません。
おじさんはそれもすべて対処してくれました。
定期的に家にやってきて、お酒を飲んでいたおじさんは懐かしい思い出です。
後から母に聞きましたが、お酒好きが原因で仕事もなくし、自分も困っているし、きちんと賃金を払うから誰か引き受けてくれる方いないかしら?と知人に聞き、紹介された方らしいです。
お酒が好きなので、仕事が終わった後は簡単なつまみと日本酒を必ず母が出していました。
だいたい私が小学校へ行っている時間に仕事をしているので、私の記憶ではストーブの前でお酒を飲んでいるおじさんなのです。
お酒ばかり飲んでいるので、母が心配してよく惣菜なども持たせていたのを覚えています。
☆
何年か経ち、転勤で東京の生活に戻りましたが、母は良く何度あのおじさんに助けられたかわからないと口にしていました。
きっと厳冬で過ごす難しさ、田舎での環境においての生活していく上で、冬に備えて準備する物、知恵などを教わったのだろうと思います。
私たち家族の生活は、おじさんの助けで成り立っていたのだとつくづく感じました。
半世紀も過ぎ、全てが快適に暮らせるシステムになり、過酷な生活状況はきっと今の赤平市にもないと思います。
おじさんは、賃金を支払ってもらえるので仕事を引き受けたのではなく、困っている私たちを見かねてだったのかもしれません。
困っている時はお互いさまで、母は母でおじさんの身体を心配してお惣菜や簡単なつまみなども渡していました。
私たちの所だけでは生計が立てられるか心配で、母は単発的ですが他の仕事も紹介してあげていたようです。
子どもでしたが、無理はしないで自分の出来る事でお互いに人助けをする、という人の基本を学んだ時代でした。
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