昔話「月の中のウサギ」と「お月さまに行ったウサギ」
2018/04/12
日本には古くから「うさぎの餅つき」や「かぐや姫」など、月にまつわる昔話が伝わっています。
月に住む「うさぎ」が餅つきをしている様子も、日本や中国などではウサギにたとえて見られますが、世界各地では見え方もいろいろあるようです。
この物語のキャラクターは、「月」-さる、「星(シリウス)」-きつね、「金星」-うさぎ、「太陽」-神さまとして天体を動物にたとえた言い伝えでもあるように、宇宙と宗教は深いつながりがあります。
月の模様については、2012年10月29日、 月周回衛星「かぐや」の収集データを分析したところ、月のうさぎの形は39億年以上前に巨大隕石の衝突によって盆地ができ、今日地球から見える月のウサギが巨大隕石の衝突によってできたものと証明されています。
幼い子には聞かせたくない夢のなくなる話は置いときましょう。
日本の「うさぎの餅つき」などの「月とうさぎ」にまつわるお話は、古代インドのジャータカ物語から由来しているようです。
ジャータカ物語というのは、「イソップ童話」や、日本の「今昔物語集」(こんじゃくものがたりしゅう)、「宇治拾遺物語」(うじしゅういものがたり)も大きく影響をうけたとされる、古代インドの仏教説話集です。
この物語は、日本にも、同じようなお話しがあります。→それは「お月さまに行ったウサギ」です。
月の中のウサギ(ジャータカ物語)
むかしむかし、ウサギには、三匹の友だちがいました。
サルと、山イヌと、カワウソです。
ある日の事、ウサギはふと、明日が精進日(しょうじんび)である事に気がつきました。
精進日というのは仏さまの教えを守って身を清め、困っている人にほどこしをする日の事です。
「明日、困っている人が来たら、精一杯助けてあげよう」
みんなはウサギの意見に賛成して、家に帰りました。
次の日の朝、カワウソは食ベ物を探しに、ガンジス川の岸までおりていきました。
一人の漁師が七匹のコイをつかまえて草の中にかくし、もっと下流の方へと行ったあとでした。
「おや? この魚は、誰の物だい? 持っていくよ」
カワウソは三ベん呼んでみましたが、返事がありません。
そこでだまって、もらってくる事にしました。
山イヌも、食ベ物を探しに行きました。
山道を進んでいると、畑の番人の小屋から肉や牛乳のにおいが流れてきます。
「おや? この食ベ物は、誰の物だい? 持っていくよ」
山イヌは三ベん呼んでみましたが、誰も現れません。
そこでやっぱり、もらっていく事にしました。
サルも森へ行って、マンゴーの実をたくさん集めてきました。
ところがウサギは、何も見つける事が出来ませんでした。
貧乏なので、家にはゴマも米も、何もありません。
「どうしよう? せっかくの精進日なのに。・・・そうだ、もしだれかが食ベ物をもらいにきたら、わたしはその人に自分の肉をあげよう」
さて、このウサギたちの事を知った天上に住む神さまは、みんなの心をためしてやろうと思いました。
そこで神さまはお坊さんに姿を変えて、まずカワウソの家にやってきました。
するとカワウソは、「さあ、お坊さま。今日は精進日です。どんどんめしあがってください」
と、コイ料理を進めました。
次に訪ねた山イヌの家では、畑の番人のところからとってきた肉や牛乳を出されました。
そして次に訪ねたサルの家では、マンゴーと冷たい水を出されました。
そして最後にウサギの家に行くと、ウサギはお坊さんに言いました。
「今日は、精進日です。
ほどこしをしたくて、あちこちかけ回ったのですが、ごちそうは手に入りませんでした。
そこで今日は、わたしを召し上がってください。
けれど、お坊さまであるあなたがわたしを殺してしまえば、いましめを破ることになります。
そこですみませんが、火をおこしてください。
そうしたら、わたしは自分で火の中に飛び込みましょう。
焼けた頃に取り出して、召し上がってください」
神さまが火をおこすと、ウサギは火の中へ飛び込みました。
ところが火の中へ身を投げたというのに、ウサギはやけど一つしません。
「あれ? おかしいな」
不思議がるウサギに、神さまが言いました。
「信仰心のあつい、かしこいウサギよ。お前の徳が、のちの世の人にかたりつがれるよう、記念をしておこう」
神さまはそう言って大きな山をつぶし、そのしぼった汁で月の表面にウサギを描きました。
その時から、月にはウサギの姿が浮かぶようになったという事です。
おしまい
(引用元:福娘童話集より)
お月さまに行ったウサギ(青森県の民話)
むかしむかし、サルとキツネとウサギが、神さまのところへ行きました。
「神さま、どうかお願いです。こんど生まれてくる時は、人間にしてください」
すると、神さまが言いました。
「人間に生まれたいのなら、自分の食べ物を人間にごちそうすることだ」
そこでサルは山へ行き、クリやカキの実を取ってきました。
キツネは川へ行って、魚を捕まえてきました。
ところがウサギの食べ物は、やわらかい草です。
今は冬なので、やわらかい草は一本もありません。
(こまったなあ。どうしよう?)
ウサギはガッカリして、サルとキツネのいるところへ戻ってきました。
「ウサギさん、きみのごちそうはどうしたの?」
「だめだよ。草はかれているし、木のめは、まだ出ていないんだ」
すると、サルが言いました。
「それじゃウサギさんは、いつまでもウサギのままでいるんだな」
「そうだよ。ごちそうも持ってこないで人間に生まれかわりたいなんて、ウサギさんはずるいよ」
キツネも、怒って言いました。
「ごめん。でも、もう一日だけ待って」
次の日、ウサギは山へ行くと、かれ木をひろい集めてきました。
そしてサルとキツネの前に、かれ木をつみあげて言いました。
「今からごちそうを焼くから、火をつけておくれ」
サルとキツネが火をつけると、かれ木はパッと燃え上がりました。
「ぼくのごちそうはないんだ。
だから、・・・だから、ぼくを人間に食べさせておくれ」
と、言うなり、ウサギは火の中に飛び込んだのです。
その時、空の上から神さまがおりてきて、さっとウサギを抱きかかえると、また空へのぼっていきました。
サルもキツネも、ビックリ。
すると、神さまが言いました。
「サルもキツネも、きっと人間に生まれかわれるだろう。
なにしろ自分の大切な食べ物を、人間にごちそうしようとしたからね。
それは、とても素晴らしい事だよ。
でもウサギは、もっと素晴らしい。
自分をすててまで、人間に食べさせようとしたのだからね。
ウサギをお月さまの国で、いつまでも幸せにしてあげよう」
神さまにだきかかえられて、ウサギは空高くのぼっていきました。
その時からウサギは、お月さまの中で楽しく暮らしているという事です。
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