虫と言うと昆虫を思い出すでしょう。
涼しくなる秋は、コオロギ、スズムシ、キリギリスなど、虫の音が賑やかになる時季です。
虫という字の由来は、ヘビをかたどった象形文字で、虫へんの字はもともとは爬虫類などを表していたそうです。
現在では爬虫類をはじめ、両生類や昆虫、貝類、小動物などにも虫へんが使われているようです。
虫辺の字は、漢字の意味としての虫の字は多くありますが、虫の名で読める漢字は意外と多くはないようです。
虫の写真やイラスト、虫々の特徴を簡単に書きそえて、漢字の成立ちはなるべく簡単に書きました。
見て頂く皆さんに面白く知って頂けるようにと思います。
◇見出し◇
▢ アリ / あぶ / カ / ブヨ / ハエ / ハチ / ミミズ / ヘビ / マムシ / エビ / ナメクジ / アワビ / ハマグリ / シジミ / アサリ / アカガイ / つぶ / セミ / ひぐらし / イナゴ / カタツムリ / カエル / まゆ / カイコ / カニ / タコ / チョウ / ハリネズミ / ノミ / ゴキブリ ▢
蟻
アリ
アリが規律正しい集団生活をする昆虫であることから、「虫」に礼儀正しい意の「義」を付けて「蟻」(アリ)となったとされています。
虻
あぶ
ハエは「ブーン」と飛んでいますが、もう少し体と羽が大きくなると「ボーウ」という感じの羽音になります。
「虫」に「亡」がくっついて「虻」(あぶ)になったと言われています。
伝染病の媒介虫ともなり、「カ」によって媒介される病気による死者は年間に75万人とか。
「地球上でもっとも人を殺害する生物」といわれています。
そこで、人類の文化をも左右しかねない「虫」として「文」をくっつけて「蚊」になったそうです。
蚋
ブヨ
人や哺乳類、鳥類から皮膚を小さく咬み切って血をエサとする虫です。
渓流などのきれいな水辺の日の当たらない木々に囲まれた場所に生息し、川沿いのキャンプ場や最近は住宅地近くなどにも発生します。
「内」とは、外から見えないところ、うらを意味するので、薄暗く見えずらい所に住む「虫」に「内」がくっついて「蚋」(ブヨ)になります。
「虫」に「㫣」を付けて「蝿」(ハエ)と書きます。
蜂
ハチ
どい針をもつ昆虫であり、女王蜂を中心に△型の集団ををなす昆虫です。
「虫」に「夆」がくっついて「蜂」と書きます。
蚓、蚯、蚯蚓
ミミズ
む様子から「虫」に「引」や「丘」をくっつけて、「蚓」、「蚯」、「蚯蚓」(ミミズ)などと書かれます。
蛇
ヘビ
うかんむりの鍋ブタのような口で、ヒ(ひと)を飲もうとするさまを表します。
「虫」に「它」がくっついて「蛇」(ヘビ)になりました。
蝮
マムシ
蛯
エビ
敵などから逃げるためには、お腹の筋肉を縮めて体を曲げ、背中の筋肉を伸ばして跳ねるように瞬時に移動できるからです。
でも、エビというと腰が曲がった様子を思い出すので、老人の意を表し、「虫」に「老」がくっついて「蛯」(エビ)と書きます。
蛞
ナメクジ
軟体動物の歯舌は、やすり状になっていて、食物を削り取って食べるのに使います。
「舌」の構造が、軟体動物の歯舌と似ているので、「虫」に「舌」がくっついて「蛞」(ナメクジ)になりました。
蚫
アワビ
殻におおわれて岩にへばりついている姿が、身を包んだように見えることから、「虫」に「包」を付けて「蚫」(アワビ)と書きます。
蛤
ハマグリ
「虫」に「合」を付けて「蛤」(ハマグリ)と書きます。
貝の中身が虫に見られていたようで、貝自体は虫の一種です。
蜆
しじみ
「利」は鋭い、役に立つ、もうけ、良い、順調など多くの意味をもち、「アサリ」は食感の歯切れの良さや多くの利益を生み出すことなどから、「虫」に「利」を付けて「蜊」(アサリ)と書きます。
橙赤色の肉で甘味があり、酢の物、寿司種、赤貝飯などにされます。
「虫」に「甘」を付けて「蚶」(アカガイ)と書きます。
螺
つぶ、ほらがい
「累」(レイ、かさねる)は、つなぐ、かさねるなど「らせん状をした貝」を意味します。
「虫」に「累」を付けて「螺」(ほらがい、つぶ)と書きます。
蝉
セミ
そのまくを、ふるわせて音を出し、腹の中の空間で音を大きくしています。
「単」の旧字体は「單」であり、「單」という字はブルブルと震えるという意味があるそうです。
虫がブルブルとふるわせて音を出すことから、「虫」に「単」を付けて「蝉」という漢字が出来ました。
蜩
ひぐらし
中国ではセミの鳴き声を「シュウ(周)」と表現するそうです。
セミの総称として、「虫」に「周」を付けて「蜩」(ひぐらし)という漢字が出来ました。
蝗
イナゴ
天災は、徳の備わっていない皇帝によるものと思われていました。
そこで「虫」に「皇」を付けて「蝗」(イナゴ)と書きます。
蝸
カタツムリ
渦(うず)という漢字があるように「渦巻いている殻」を背負ったような姿のカタツムリを、「虫」に「咼」を付けて「蝸」(カタツムリ)と書きます。
蛙
カエル
「虫」に「圭」を付けて「蛙」(カエル)と書きます。
蛹
まゆ
「虫」に「甬」を付けて「蛹」(まゆ)と書きます。
蚕
カイコ
「蚕」の旧字体は「蠶」で、絵文字、甲骨文字からできています。
「簪」(かんざし)は、潛(ひそ)むの意味合いから、桑の葉に潜む蚕の様子を表しているといわれています。
桑の葉に潜む虫、「虫」の上に「簪」→「天」を付けて「蚕」(カイコ)と書きます。
蚕は古事記や日本書紀に、神の肉体から生まれ出たと記されているように、天からもたらされた特別な虫でした。
蟹、蠏
カニ
「カニ」は 一対のハサミと四対の足を持ち、容易にバラバラに出来ることから、「虫」に「解」を付けて「蟹」や「蠏」と書きます。
蛸
タコ
タコの姿が大地に棲むクモのように見えたようで、海のクモという意味で、虫編が使われたようです。
「虫」に「肖」を付けて「蛸」(タコ)と書きます。
蝶
チョウ
「虫」に「枼」を付けて「蝶」(チョウ)と書きます。
蝟
ハリネズミ
哺乳類ですが、丸く小さくなることで虫編の字にあてられています。
「胃」は胃袋の意で丸くまとまったもの、丸く集まることを意味します。
虫編の字はもともとは爬虫類などを表していたので、小哺乳類に対してもそう違和感はなかったのでしょう。
「虫」に「胃」を付けて「蝟」(ハリネズミ)と書きます。
動物やペット、人などに咬みつき血を飲みます。
「蚤」の字は、「掻きたくなるかゆい虫」という意味があるようです。
「㕚」は「さす、さしはさむ、つきさす、つめ、はやい」などの意味を持ちます。
「虫」の上に「㕚」を付けて「蚤」(ノミ)と書きます。
蜚
あぶらむし(ゴキブリ)
「非」は「羽」の鏡面対象字で、「羽を左右に広げる」の意味です。
「虫」の上に「非」を付けて「蜚」(あぶらむし)と書きます。
「蜚」の字は飛ぶ意味もあります。